山猫敬具

山猫敬具



毛虫のやうな北極星
ぐるぐるのこんな空にも
燐寸ぽうぽう灯りはともる
イゼルにかかる真白に
どこも一面カンバスなので
ひらにはあと息を吐き
西洋の本ですか難しいのですね
などと嘯けども恋は嬉しい
廃線当代で切符も切り
はきはきどもる日輪など
夜にはきつと玉蟲で
それでは切ないではないですか
ぎらぎら眩しい陽に眩み
おれはおろおろ繭に包まる
これをあるいは毛布などと呼び
檀家などは有難がるので
おれもさぞ霊験あらたかです
なにせ印象派なのですから
ひだりの湿地は餞別で
きつとさう梯子のうえで
そそくさ並ぶ銀紙の鉄柱を
おれはといえば遠巻きに
いつだつてさう眺めている
うすら寒いものですね
だつてシフオンで哀しいから
粉砂糖のやうにぽふぽふ揺れては
おまえに今日も降り積もる
そのやうな十七字は詩行として
将に定義されるべきなのだ
このビイドロがおまえの眼窩に
きつちりおさまることを
おれは切に願うのであります


山猫敬具