2014-06-01から1ヶ月間の記事一覧

倒錯

倒錯 なきがらのこい 鵺池の鏡 こじつけのそら 雷鳴の元服 はじかれたあめ ビロードの傘 しんかいのゆめ 八幡の屏風 さきもののうた 首のない切株 あしたのたつき 足のない花魁 かざしもくるま 包帯まいた玩具 かいがらのふね 安土の田圃 うかぶからふね 茶…

両替町

両替町 夜は手術された 電気のないぞう とろみのある雨 両替町にしとり 下駄をはいた黒 つき咲いた梅雨 しとり宝々池行 ほたるあかるい ほたるあめ電燈 牡丹を銀色ぬる 朝は手配された 氷嚢の鉄のこい みずのおてだま 両替町にしとり

くるこい

くるこい こいよこいよ よいよよいよ 都々逸ふうに さらばさらば ならばならば 都々逸ふうに くもつたから まりついた娘 栗の木のした

黒 かざしもの くもりさら梳く よどの髪ま黒い こまりもの けまりさら梳く くびの腹ま黒い しかくうみ くさりの逢瀬坂 きみの心ま黒い こいのうみ とんぼの泪梳く ま黒い泪を梳く そのやうな 御所での或る日 おれは色をぬる ここらの灯 鉛筆でぬり潰す ま黒…

ねじ

ねじ たたみにネジが ぎりりぎりりと 野田ふじ花つき おやまの火事が ぼやぼやネジ 小螵らん札つき さみだれかみが さらんさらんと あじさい露つき かごのなき屏風 ぴうんぴうんと 菖蒲のはなおち てまえはかみを うしろにまとめ ネジ金具きつた

夢一

夢 しかくい夢をみた めがねはまるかつた まるこい夢をみた めがねはしかくかつた さんかく夢をみた こころはまるかつた こころの夢をみた さんかくはこころだつた どうしやうもなく さんかくはこころだつた しかくい空をみた こころはからだつた こころの空…

ふうりん

ふうりん たかせふねに 月影なめたなつ さかさのしかく かびたゆうぐれ てんぐあめに 曇天あいたそら 烏丸通ふね上ル さびたなつぐれ たからがいけ ほねのなか風鈴 寺町通六畳下ル ぬれたあじさい とうじのあとの 八雲に墨をぬる あのまつくろい あのまつく…

ほたる

ほたる てまりうたは しんでんずのやう ひだりめはとりい おけいだいは あずまえびすさん あじさいはだいり かぞえうたは いごのなかのいど もどりばしおゆき せつたちやら せつたちやららん あまがさいらぬか たからがいけ ほたるのかんでんち ゆびにとまつ…

さいころ

さいころ けがしたさいころ どのめもでえへん ころころさるとる あそんださいころ ここらはていへん ちんちろりんりん かこんださいころ はんかちやうかと ゆめはつたはつた いかれたさいころ どのめもさえへん さいふつたふつた かわらのさいころ たかせの…

おあそび

おあそび うつむいて かごうりはえ てにおはを うりざねさえ つきかげは ぴすとるとれ かざしもに おざしきゆれ おはじきは まあるいほね こおひいと はびいたこい ぴんぽんで はごいたやれ つうしんは だだだだだだ なつかしは おかしいひび

ぱちんこ

ぱちんこ ぱちんこだま てつぽうだま すこしおだまり ぱちんこだま びいどろだま すこしひだまり ぱちんこだま いちえんだま すこしちだまり ぱちんこだま かぞえてたら まりちやんきた

乙女坂

乙女坂 はいからうた からりからりと おとめざかゆく からくりゆめ からんからんと はなおもえゆく かなしみさめ じあんじあんと あめはふりゆく だがしやこい ちりんちりんと なつはすぎゆく おしぐれくれ さらりさらりと おとめざかさがる

花火

花火 ちばしつてはねる はなだまのおえかき よぞらにはなうつた こなきいろのはなだま きながしてゆれる みずたまのおえかき よぞらにはなおつた みずいろのはなだま

はちがつ

はちがつ いつわられたかがみ くもにしおりはさんで おりづるそらとばした はちがつのぎんこう ぜにおろしあさたべる おるがんそらとばした だいまるのてんいん うりばつくりかえて はんかちそらとばした くりかえたはちがつ みからぼうきれのびて みかげい…

田楽

田楽 白んだ河岸は照りかえし うすいひかりが庵をあんだ あずまからたちのぼるおびが ぽうつと踊つて朝をほどく いばら野原にも澱ができ 天つ神のオペラが上演され にごつたそらは水鏡のそら ニーベルングの朝をほどく みやこは鉾たて雨かえし しずかなつぶ…

花絶句

花絶句 花はもゆれど あしはくつをはかぬ ふきすさび花は散る よいの古城につき浮かぶ 色はかわれど せみはからをぬがぬ なつかれて空は散る あけの古木にから浮かぶ 彩はにごれど うるものはかわらぬ うつろいて都は散る ひるの大路にうた浮かぶ 恋はもゆれ…

ゆびきり

ゆびきり ごほんのゆびきり にんぎやうピルのんだ あかいビルのおくじやうで ごほんのゆびきつた よんほんのゆびきり ラジオとてをつないだ うしなつたでんぱのこえで よんほんのゆびきつた さんぼんのゆびきり まえがみといとでんわ あかいまどのいつしつで…

矛盾

矛盾 けんかわかれした定規 妻子をおいてきた文士 引力にまけてきた胎児 あるき方を忘れた美貌 ひるまをつかんだ夜鷹 卒塔婆にこいした武士 三味線を爪びいた電線 のろいかけられた算盤 時雨ぬりつぶした鉛筆 碁盤にしきつめた文字 三千のくもつめた頭陀 い…

めんこ

めんこ まさしげのめんこ 二色刷りの長方形 髭はやしたかみが ぱたんぱたんと変化する よしつねのめんこ めんこい顔の長方形 笛ふいたわらべが はらりはらりと変化する しんげんのめんこ 風林火山の長方形 ものくろの太刀が ばたんばたんと変化する のぶなが…

びいだま

びいだま おけいこのかえりみち かがみがいちまいおよいで おそらにとんでいつた みそらはまるでおりがみの かどのやうにきれいだつた でんせんにきりとられた あおいしかくいもようを おれはくろくぬりつぶそうと えんぴつでがさがさやるが いつこうにくろ…

群青

群青 あじさいと看板 つゆつゆと洋襦袢 梅雨にボタンかけて 女子学生はからから歩く がくせいと喫茶 もくもくと洋煙草 梅雨にミルクかけて 窓硝子はべたべた濁る ぱすてると果物 さくさくと洋なし 梅雨にミシンぬつて 男子学生はつぎはぎ着る おそろいと鳥籠…

飴 ひやしあめ かきこほり くもはむし おかうくふ なつのあめ くれのあめ なきこほり こひなめて なつめくふ ゆうのあめ なれのあめ かやのそと かうたひて かなをくふ よいのあめ

五百十型

五百十型 うさぎは活字におわれ 在る日、脳病院からにげました 脱兎などと活字をはられ 五百十型の鉄屑とあいなりました 赤瑪瑙にひとみをぬるはつき つきは屑を浜辺につきあげます まるでどうしやうもないかずの さびたぽんこつの活字の泪は はしるいみすら…