雪月抄

雪月抄

    なんてんカラアの紅いほほ
   口もとかくして走り去る
  毛糸の絡まるカラアドは
 ほそい小雪であみあげた
処女のがらくたであつた

    おもいの丈の吹きすさぶ
   ネオンちらつく街のかど
  踏まれた影とゆうくれを
 珈琲カツプでのみあけた
まあるい窓のむこうがわ

    摘んだ泪のくれないは
   ピンボケした窓ガラス
  真綿の雪によく染んで
 まるでなんてんのやう
筒をとどける霄のやう

    在るやうで又ないやうな
   唐人の寝言とシヤボン玉
  シルクの絡むあしもとを
 ぎいと踏んだは雪月の抄
語りべ知らず降り積もる