心象リンゲル

心象リンゲル



水夫は深く帽子を被り
お忘れ物のないように、
ご支度くださいと
たしかにさう/聴診器幻聴
金魚の衣擦れのひびく
いちいちシロツメなのは、
二千圓ほどの漂白剤と
甲冑のやうな著莪の木々
それでもなお/空のハーバー
こころの石畳はどうしてこうも
不協心音なのであらうか
おれは木陰にもたれて
このフランシスの花園に、
どうして港のないものかと
あれやこれやと馳せては
ろくすぽボタンのつけられぬ
わが身レコードに走らせて、
あれはさう/アラベスク
ひどく横着で透明な少女の
草書のやうなあやふやさ
そのやうな好ましい色ばかりを
おれは客船から眺めていた