夢遊描画

夢遊描画 富田林の中紙に並ぶもの あらゆるメルヘンは鰹節で 丸めた意匠の小坊主も 何れ霊長や付喪となつて ほとんどが戯画調の人体図 等辺に少女をならべては 一色刷りの念力なのだから どうかあちらのほうに

変型とエチュード

変型とエチュード カテーテルは念人であるゆえ あの通りの理髪店のやうに 或る日パタンとやるわけには なにせ十八なのですから 日に三度ほど鋏を入れ 真夜中にかかるオルゴールも 月のマントが黒いからと 白い家の少女のショパンは あんなにも激しく即興を奏…

無題

無題 いつもどうしてこの辺は 明朝体の庇髪ばかりで 非売と貼られたアラビア数字 MSゴシックは嗜好の類で コート紙で厭にざらざらした このやうに雅号も飛んで みどりのいつさう暗いのだから 水揚げされたオノマトペや 万里に連なるこれらの城壁群は 片田舎…

心象ダビング

心象ダビング このダビングは 鮮度のよい 春雨の中に 庖丁を入れるやうに 四行は動ぜず 生業という 連写機に 天日干しに柑橘 ランプの魔人の立ち昇る 分業なればどれほどか くすしの調剤した 鏡台はフオルテの丘 立見のピアール婦人 この舞踏と調律 優しい慈…

アパートと隣人

アパートと隣人 荒れはてた廃屋シャープには 四角に浮かぶ花もなく、 前後に断絶された木蘭すら おれには有難いものであると 丁寧に封をした景色なんぞ まるきりオルガン調で揚羽なのだ おまえが翅を活計にする為、 町々で首を垂れているあいだも ここらの土…

無題

無題 てつくずの諍いの前科も グリッドの林の中に投げられた それらを変形やカットなどと呼ぶには あまりに前衛的にすぎるのだから おれに張られた送電線なんぞは チカチカの烏賊のやうになっている これら一連の天の釈文の大凡は はりがねにシャボンで屑石…

超越考察

超越考察 義眼の烏は己が故に 十六鏡、あるいはーー撚糸 卯月の田んぼに線はなく あまりに非解剖学的であるから 柔らかい布のやうな風や 乱視ーーあるいは過矯正の空 あらゆる物が光学から脱走する たといシスレーであらうとも どのやうな色彩かーー手は光り…

二行スケッチ

二行スケッチ 下弦の月は版画でこぼこ 朱色の部屋 墨色の庭先から 渡航する胞子を眺む 練り消しと水風船は 白紙のクロック 物自体に描きこむ徒 俺はそいつらが恐ろしい 肢体についたあの暗い あのべたべたを どうこうしようなどと 正気の沙汰ではないのだか…

主観乱気

主観乱気 頬に生えた苔は落第生で 静止したうなじはロザリオ ともがらは剽軽で 芥子もついてベタベタだ おれにまとわりつく 笑窪のあれらの恐ろしい あらゆる省察も諂うからと 貴女はヘアピンを曲げる このエチュードの線は 空間と延長に投擲されて 香料のみ…

四行足形

四行足形 付箋のタルトは模様変え あらゆる方便を詰め込んだ 紙芝居のような情景と小瓶 ステップの誘惑は甘い珈琲 軽い温度のあるならば チューリップも逆さまで 中廊下テレフォンは小紅 のぼせるまで蜂蜜の芝居小屋 デンデン太鼓のピアス揺れ 目張りのはり…

こころ装丁

こころ装丁 春の悪戯にちがいない 肘にふわりと手をやるのは 雑にまとめた髪を結い 或る女の日記抄を 俺もインクの薄れているから よくよく霊験あらたかで 窯でがらがら活字を洗つて 定規のように精緻でないから 未だに草色の装丁であれと そのやうに戸を叩…

流動性と足形

流動性と足形 長い旅路は背広の皺で 土瓶蒸し或いはプリンのやう 中山の料亭のどんちゃんを おれはもう桂むきなのだから こんな足形で春を踊るのも 水辺に立ち、何度目だらうか 夜は何事も許すだとか 井原は処女作に記していたが このステップの流動性を 湖…

電算ラメール

電算ラメール 六百ワットの夢をみて 濡れた寝間着とシーツを 文房堂でごしごしやつては 一人静の花弁のやうに 気位ばかりにかかるビーズ壁 この女に三千円を握らせ 空気筒とはあまりに不細工です この相のアールは伝線した 当たりの悪い化学繊維ばかりで こ…

不具とアレルギ

不具とアレルギ おれはといえば 蛸足でたらめ魚の目で 錦市場に並んでは モダンな春を待ちわびて その流動的な二小節を やたら関節の外れた空の名を たずねあぐんでいるというのに こちらを睨めつけるなんて 蕾なんぞは北風に揺れ サリチル酸のワルツでした …

月光と貴婦人

月光と貴婦人 眼瞼から伸びる針金は ガリガリと手動のショパンで 絹糸のやうにいちめんを 雨や日照りや雪などで 県道の細いのはおれがよく ぷかぷかやるからに違いない ええええさうですとも きつとここらが痩せたのも あのやうに金魚は空を泳いで 煌月のし…

山猫敬具

山猫敬具 毛虫のやうな北極星で ぐるぐるのこんな空にも 燐寸ぽうぽう灯りはともる イゼルにかかる真白に どこも一面カンバスなので ひらにはあと息を吐き 西洋の本ですか難しいのですね などと嘯けども恋は嬉しい 廃線当代で切符も切り はきはきどもる日輪…

図画工作

図画工作 坂本某の空中連弾は 或る種の発明で(happy end) クラリッサの四分音符 当符号なんぞは小豆のやうで エメラルドやルビーやらに 色合いをよく変えてゆく ネイロの品書きは半固形で どうしておまえはさう いちいち挑発めいた真似を あゝ、孤独なのだら…

俯瞰気狂

俯瞰気狂 冬空はテントのぴんと張り まるきり二ツカや甲類で 窅然とした師走を走り おもいおもいを転がしては 舌で幇間つつみを打つて 油性のオルガンをおれは弾く この線はきつと膾のやうに トレスできるものでせうかと 偽造された心持ちである為 そんな具…

看病品書

看病品書 お元気ですかとよく俺は問い 強いて花にかこつけ出来合いで くよくよするなと鏡面に云い 品種改良されたこいつらの名を 二度と呼んではやるものかと かように召致するたび思うゆえ こんな心持ちではいられなひ 諂いはべつぴんで檸檬のごとく 目に痛…

衒学モノレール

衒学モノレール 若さはフルムーン宝塚 カツカツ歩く女形の襟は 潔癖にしてメイク部屋さ 緞帳あがらば乙女を抱く パチクリと目をやらば 眼瞼なんぞは一等星です よく通る声で呼んでくれ 俺の名をその澄んだ声で ブラウン管に映る日は 山に火事だとうそぶいて …

幻想水槽

幻想水槽 これもゴートと蝙蝠の 合皮ですかとチアノゼおこし あれもそれも千丈の戯言で 俺にもよく麻酔をかけてくれ さうすればまだ間に合うさ 恋慕時雨の冷たく濡れた手に かすかに不時着する体温だけが ボロの毛布もかけてくれ コツトンのそろそろ降りて …

俯瞰唾棄

俯瞰唾棄 山々の鼻梁の柔らかく 白鍵黒鍵の螺旋タラツプです 今朝もおれは水銀で濾した あらゆる苦さや痛さを呑んで そのやうな眼差しをするな まるで投石のやうではないか こんな澄んだセロハンで 息も吐く吐くほのりと白く 矢鱈と枯井戸のスコウプでした …

サロンエプロン

サロンエプロン おまえはいつかさう 白い校舎を建てるのだと かつかつと頬火照り からきし百日紅のやう 手書きにカアルブツセなど 若しおれに改行のあらば どんなによかつたであらうか 二十四箇年も擦り切れて 外は変に明るいのであるから もうこうするほか…

木通とマフラー

木通とマフラー たとえばこのやうに 大崎の黄色もチーフ風で 空から降るコンクリ製 おれは三角州に立ち けぶるネオンに植えられた 天秤鉄筋の変奏曲を それは一体どんな様だ (ここが六曜社であれば どんなによかつたであらうか) 風のついたての分厚い これに…

俯瞰蒸発

俯瞰蒸発 甘いトローチの逗留は どこか錆びた天使のやうで おれは夕暮れに佇む 舌で転がす昼なんぞは 澹蕩の田園を行き来して 白いカーテンで繕つた まるきり田崎であつたのに 空の一面パールの糸くず どうしてこうなるのだ 闡明なれば出来べき筈だ いずれ朝…

俯瞰洗濯

俯瞰洗濯 漂白だらけの封を切り 空から蔓のもたれてきる ねり消しで雲をごりごりやり 終ぞそれでは様の無い 平身低頭のクロワツサン 黴の生えたこの毛布のやうで 茶色い軽視の前髪すらも かかる風情に詠み人知らず 硝子に混ぜた日光の これらは英国ステンド…

杉山トローメライ

杉山トローメライ 俘囚のごとき風袋で 背にもたれるなにものか おまえは古体の簪で 先方のお歴々を前にしても そのやうに鬼灯なのだ それはそれで立派ではないか 得心の行くまで漕いで 金森から出でて果樹園へ はたまたフルムーンの傍まで 風はきりきり砂塵…

ヒデリコ

ヒデリコ べたべたとした 粘土のぽしゃりと止んで ここからはヒデリコか どちらに歩くべきなのでせう ええ、きつとそうなのです ヘンテコな日輪や月光へ 逆向きに歩き出す者もいて おれはひとりここに居る 素足で水面をてらてらやれば もうゆらゆらの遊戯場…

サ変と未然形

サ変と未然形 かじかんだ手をやらば 明礬そのうち転んで やけに金木犀の匂いの強い 山林歩廊で襟を立てては 北風もピウピウ吹いて 形而上水面青鷺遁走 この理科室の研究成果で おれはあの月を射る こんな低い月だというのに まるきり的の外れている ここらに…

驟雨

驟雨 当て字のエチュードは 夕暮れに噛むポッキーで ポキンとやるほど切なくて あれやこれやと荷台に積む 埃のついたガム余り このやうな重なりすら いまの俺には手に余る のべつまくなし繋いでは おかつぱに風船ぱちん たといば琥珀の粘膜あらば いい具合に…